長いことつつきまわしていたSHARPの古い電卓EL-210/EL-215のための基板とハードウェアがようやく完成しました。事務用VFD電卓はRPN関数電卓として生まれ変わって私の机で働いています。
機能としては
- 4段スタック逆ポーランド法
- 表示切替(通常、科学表示、技術表示)
- 入力編集(小数点、符号切り替え、指数入力、1文字削除)
- スタック操作(x⇔y、回転)
- 関数(平方根、逆数、2乗、y^x、対数、べき乗、三角関数)
- 複素演算(すべての関数の複素演算、直交座標⇔極座標、実部⇔虚部)
- メモリ記憶、メモリ読み出し
- UNDO
を実装しました。かなりむきになって実装しています。MCUにはSTM32G0B1KET6を使用しています。
完全に趣味のプロジェクトですが、このプロジェクトでは
- Google Test
- CI/CD
- C++のテンプレート・プログラミング
- VFD
- スイッチング・レギュレータ回路
などこれまで触れたことのない技術を習得することができ、得るものの多いプロジェクトとなりました。
ベースとなったEL-210/EL-215は1980年代初頭の低価格電卓です。70年代に苛烈を極めた電卓戦争もこの頃にはSHARPとCASIOの2強に絞られており、主戦場もLCDによる薄型電卓に移っていました。EL-210は成熟した技術を使ったローコスト電卓として韓国で生産されていた模様です。一方、キーボード裏にはステンレス板をおごるなど、ローコストながら品質へのこだわりもあったようです。
日本のエレクトロニクスの黄金時代の一翼を担ったSHARPへの敬意をこめて、基板の色を赤にしました。
HP-15CのUIを参考にしたソフトウェアの出来は上々で、会社で日常使いしています。VFDの見やすい表示とRPNによる操作性のおかげで、ストレスなく使うことができます。
ハードウェアとソフトウェアは、GitHubでオープンソースとして公開しています。
- rpn2026 : 電卓ファームウェア。キーボードスキャンとVFDへの表示。
- rpn_engine : RPNエンジン、編集機能、表示文字列生成、アンチチャタリング、セグメントデコーダ、キーマトリックス・エンコーダ。
- EL-210-MOD : 基板設計。