CQ Ham radio QEX誌 2018.12

ここ数ヶ月、CQ Ham radio誌を読むようになりました。高校時代アマチュア無線の免許を持っていた頃には毎号のように読んでいたのですが概ね30年くらいブランクがあります(10年くらい前のSDR基板がついた号は買いました)。

さて、そのCQ誌ですがなんとはなしに(こんな感じだったっけなぁ)という違和感がありましたが、本屋でQEX誌を見つけて納得。こっちに技術系の話を寄せているようです。かつてのHam Journal誌ほどではありませんが、色々面白い記事がありました。

とくに面白かったのはトリオ(ケンウッド)の歴代主力機をTS-830から並べて解説する特集です。私はTS-830(1980年)の時代にアマチュア無線から距離を置いてしまったので、その後のTS-850、TS-870への変遷は興味深かったです。主力機の開発には数年の時間を置くため、その時々の通信機技術の潮流を見ることができて面白い特集でした。

ひとつ驚いたこと。TS-870(1995年)にはモトローラのDSP56002が搭載されていたのですね。IFディジタルと銘打たれた通信機ですが、実際のIF周波数は11.3kHzで、オーディオADCで読み込んで処理をしています。DSP56002はデータ空間がX,Yに分かれているというDSPで、内蔵データRAMもXYそれぞれ256Wしかないという今となっては恐るべき低リソースDSPです。それでも連続性能で40MMAC/Sを叩き出す古典的DSPの決定版でした。

512Wのデータメモリ上でケンウッドの技術者がどのようにSDRを実装したのか大変興味深いのですが、90年台のCQ誌のバックナンバーまで遡らないと詳細記事を読めないようです。信号処理部のブロックダイアグラムを見るとノッチフィルタはAGCループの内側なのにビートキャンセラはAGCループの外にあり、(適応フィルタをループの外に置きたかったのかなぁ)などと妄想しています。

ところで、QEX誌の記事には間違いがあります。DSP56002を24bit浮動小数点DSPと紹介していますが、正しくは24bit固定小数点DSPです。

DSP56002は前身となるDSP56000(1986年)の改良版となる製品ですがDSP56000の時代から必要なペリフェラルとメモリを内蔵するMCU的構成でした。古い製品ですがMotorolaの半導体部門からFreescaleを経てNXPが今でもデータシートファミリー・マニュアルを公開しており、命令セットを参照することもできます。興味のある方は覗いてみるといいでしょう。

また、最新のTS-890(2018年)の方にはSHARCが搭載されているとのこと。SHARCクラスのDSPにはオーディオ帯域をIFとするアナログ変復調など軽い処理ですので、きっと複素周波数変換器とフィルタを複数段ならべてIFシフトを組んだり、適応的なフィルタ、音の味付けなどいろいろなことに使われているのだろうと思います。

QEXはどうやら季刊誌のようです。次は春号ですね。待ち遠しいです。

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