振幅変調波のスペクトル

振幅変調をかけた被変調波はどんなスペクトルを持っているのでしょうか。以下ではそれを探ってみます。

式から導き出す

振幅変調は以下の式であらわすことができました。

振幅変調の式

この式を三角関数の乗法公式を使って分解すると以下のようになります。

振幅変調のスペクトル

得られた式をみると、次の3項の和になっています:

これはつまり、搬送波の両側に変調波の周波数分の和差信号が現れることを意味します(図1)。図では角周波数ωではなく周波数fを使っています。

正弦波による振幅変調のスペクトル

図1 振幅変調の被変調波のスペクトル

正弦波の代わりに音声信号で振幅変調をかけると図2のようになります。音声信号の低域を赤く塗りましたので、変調後、搬送波の両側にスペクトルが対称に広がる様子がわかるはずです。図中搬送波の右側に広がる成分は周波数が上であることから「上側波帯(USB : Upper Side Band)」と呼ばれ、左側を「下側波帯(LSB:Lower Side Band)」と呼びます。

音声による振幅変調のスペクトル

図2 音声による振幅変調

振幅変調の被変調波は変調に使った信号の帯域の倍の電波帯域を占有します。これは図2で見ると元の信号が搬送波の両側に広がっていることから容易に理解できます。アマチュア無線では音声の帯域は300Hzから3KHzと定められており、このことから振幅変調は6KHzを占有することがわかります。

DSBとSSB

振幅変調を行う場合、元の信号にDCバイアスを与えて負の値で変調しないようにしました。では、このバイアスなしで変調を行うとどうなるか見てみましょう。式は以下のようになります。

バイアスのない振幅変調

この式を展開すると、次のように搬送波のない振幅変調のスペクトルを導き出せます。

DSBのスペクトル

得られた式は搬送波がないことを除くと振幅変調と代わりません。このスペクトルを図示すると図3のようになります。

DSB

図3 DSB

このように搬送波がなく、もとあった搬送波の両側に振幅変調と同じスペクトルが広がる形式をDSB(Double Side Band)と呼びます。DSBはAMに比べて電力あたりの情報伝送効率が高いのが特徴です。一方で復調には工夫が必要です。

DSBは電力効率が高まるものの、通常の振幅変調と同じ帯域を占有します。しかし、USBとLSBは形式が違うだけで両方とも同じ情報をもっていることから、どちらか片方だけ送れば電波の占有を減らすことができます。そこで、図4のようにDSBにフィルターをかけて片方の信号だけ取り出す方法をSSBと呼びます。

LSB

図4 SSB(LSB)

SSB方式は上側波帯を取り出すか下側波帯を取り出すかでUSB、LSBと呼ばれます。

⇒次は同期検波

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