出勤前ですが、大事なことのような気がしますので思いついた今書いておきます。
以前つとめていた職場で、出張中に同僚から
「IEEEの発表会の幹事なんだけど、手伝ってくれない?」
と頼まれたことがあります。そんな面白そうな機会は滅多に無いので一も二も無く同意しました。彼曰く
「IEEEはアメリカ中で似たような発表会を開いている。今度の発表会はこの谷の近辺の組織のもの」
谷というと日本人としては精々小さな山間の谷を思い出す程度ですが、アメリカの谷が巨大な土地であることはご存じの通り。前の職場は本社の設備が整っており、発表当日私は機械室に閉じこもって同僚の合図でマイクや照明をコントロールしていました。簡単なお仕事です。
さて、谷と言ってもシリコンバレーではありません。会合に出席したのは私の記憶では精々十数人。発表したのは私の同僚一人でした。内容は彼には悪いですが、0年代としてもやや平凡なFPGAネタ。事前のリハーサルにつきあいましたが正直なところ(もうちょっと客にプレゼン揉んでもらえ)といったところ。
しかし発表中の質疑は比較的活発でした。ネットで何でも情報が手に入る時代ですが、なんといっても本当に使いこなしていた技術者の生の声を聞いて、自分の生の質問をぶつける機会はそうはありません。見事な白髭の老技術者が質問していたのを鮮明に覚えています。
こうして発表を終えると、IEEEから認定証をもらえるとのこと。小規模とはいえ公式会合なので彼の実績は公的なものになります。彼は転職レジメに
「IEEEの会合で発表した」
と堂々と書けることになります。
アメリカは職業寄り合いを作るのが上手いなと感じます。IEEEなんか商工会議所だと言う声を聞きます。が、彼らは同業として自分たちの地位を守るべく、ロビー活動を行い、地盤を固めるために啓蒙を怠りません。また、メンバーに経験を積ませ、箔をつけ、さらには自分たちの組織の存在を広く知らしめる代表に育てます。ボトムアップで組織をつくり、トップダウンに運営して、会員の隅々までメリットを与える見事な腕前は、社会的な意識のなせる技でしょうか。
日本は斜陽だ個人のアピールが必要だ、とツイッターで目にして、ふと思い出した話です。